老健って在宅復帰させる施設って聞いたけど本当?
介護が大変になってきたから入所できないかなぁ。
病院から退院して、そのまま入所できるって話もきいたけど、
どんな流れで何をやってくれるのかしら。。。
こんな疑問にお答えします。
老健は正式名称を「介護老人保健施設」と言います。
業界用語で「中間施設」ともいわれ、自宅に帰るために機能訓練(リハビリ)をメインに行っていく施設のことです。
老健は医師をはじめ、看護師、介護福祉士、PT・OT・STが在中しています。
医療ケアをはじめ、在宅復帰に向けた手厚いサービスが受けれる特徴があります。
在宅復帰までの支援の流れが不透明な部分もあり、とくに地方に行くほど発信が少ないですから、その傾向は強いといった印象です。
在宅介護が大変になり「入所してもらいたい」と希望される家族もいますが、目的があやふやになっている方が多くいます。
とくに小さな田舎にいくと「入所=ずっと居れる」と勘違いされている人が多く、濃い事前説明を怠るとトラブルになるケースがありました。
老健の「機能」が分かるように在宅復帰までの流れを見える化して解説をしていきます。
参考にしていただければと思います。
私の仕事のはじまりは、介護老人保健施設での勤務です。
詳しくはプロフィールからどうぞ。
それでは、利用者様と過ごした日々を思い返しながらまとめていきます。
老健から在宅復帰まで流れとは?
勤務経験をもとにして、流れをまとめたいと思います。
在宅復帰までのポイントは3つあります。
それでは、全体像を把握していきましょう。
以下の流れで説明していきます。
- 老健から在宅復帰まではこんなイメージ
- 老健から在宅復帰に向けたケアプランを作成
- 老健から在宅復帰にむけた取り組みを紹介
- 老健から在宅復帰後に居宅サービスを併用する
- 【まとめ】老健から在宅復帰までの流れとは?
老健から在宅復帰まではこんなイメージ
入所から支援開始までの流れです。
入所の希望申請
老健の利用希望を伝えていきます。
入所前の状況として「3パターン」ほど考えられます。
ケース①:すでに介護保険サービスを使っている場合
専属の居宅ケアマネージャーがいるはずですので相談をします。
お住いの地域に複数の老健がある場合は、入所希望の本人を連れて、見学の同行なども行って下さいます。
ケース②:介護保険サービスを使ったことがない場合
居宅ケアマネージャーが必要になりますので、お住いの自治体(役場や市役所)の介護課(地域によって名称は違います)に行き、利用希望を伝えて相談をしていきます。
ケース③:医療機関(病院)に入院をしている場合
居宅ケアマネージャーがいる場合はケース①の手順です。
介護保険サービスを使ったことがない場合は、ケアマネージャーの選定が必要になります。
病院の場合は「居宅介護支援事業」という部門があるところもありますので、病院のケースワーカーに相談をすれば繋いでくれます。(看護師さんに希望を言いましょう)
この場合、本人が老健施設の見学に行けない場合が殆どですので家族のみで見学をします。
希望の老健で検討会
老健の入所希望が分かると、施設で検討会が開かれます。
施設長をはじめ、専門分野の管理職が集まって会議をします。
入所希望の方は、常に複数名いることを念頭において下さい。
施設によって支援カラーがあるため、家族の希望に対して「出来ること」「出来ない事」があります。
洗い出しをしながら、受け入れ可能な利用者様について絞っていきます。
入所決定
各手続きを済ませて、入所となります。
冒頭でも記述した通りで、ずっと居れる施設ではありません。
3ヶ月、6ヶ月、1年という区切りがあります。
理由については後述するケアプランを参考にどうぞ。
老健から在宅復帰に向けたケアプランを作成
介護保険サービスを利用するためにはケアプランが必須です。
大きく2つあります。
老健で重要になるのが「2」です。※「1」は老健から退所したあとに重要。
入所前に施設プラン(以下、ケアプランを略します)の原案を作成していきます。
入所後に見直しをしていき在宅復帰に向けた目標を設定していきます。
在宅復帰が最終目標ですが、経過によって方向性の修正が必要となります
目標達成に向けて施設内で「多職種連携」が欠かせません。
施設プランを参考に、関わる専門職員がそれぞれ計画書を立案していきます。
定期的に施設内で開催されるケース会議(サービス担当者会議ともいいます)で支援の方向性を一致させながら、施設ケアマネが目標修正をしていきます。
医師による治療計画
医療的な措置が必要な場合は、医師の診察を受けることができます。
そのため、病院に長期入院するのではなく、一区切りした段階で老健に転院することはよくあります。
こんな事例があります。
など、
医師が診察をして、病気の経過をおっていきます。
病院みたく医療設備が充実しているわけではありませんので、重度な方は少ないのが印象です。
病状が悪化し、医療的措置が必要であれば病院に転院させることも行います。
看護師による看護計画
体調管理について看護師が計画をたてます。
血圧、脈、呼吸数、血糖、排便などのコントロールが在宅復帰で大切になります。
老健内の医療処置は看護師が行いますので、必要な方は老健で点滴による加療を受けることができます。
服薬管理やインシュリン注射技法などの指導も受けられ、ご自分で体調が管理できるように
サポートしてくれます。
健康状態の変化をよくみていますので、必要に応じて早急に医師と連携をとってもらえます。
介護職員による介護計画
日常生活全般について介護計画が立てられます。
老健は「生活の場」で、退所するまで他の利用者様と共に過ごす場です。
決められた場所で生活しやすく、かつ、退所してからもご自分で自立した生活ができるようサポートを受けます。
食事、整容、更衣、入浴、排泄といったあらゆる場面で介助を受けることができ、老健で生活をしていて一番身近な存在になります。
体調変化をすぐ感じとってくれたり、後述するリハビリテーションの内容を盛り込んだ介助を実践したり、施設での活躍の幅がとても広いです。
在宅介護がより楽になるよう、施設での介護を家族に伝達することを退所時にしてくれます。
リハビリ職員によるリハビリテーション実施計画書
老健のメインが「リハビリテーション」です。
体の機能・日常生活動作の要素を分解して訓練内容を決めていきます。
日常生活とは以下をいいます。
老健では、「個別リハビリテーション」サービスをうけることができます。
訓練内容はあなたに必要なものだけに特化された内容で「特別」と言えます。
私(執筆者)が良くうけていたオーダーは以下です。
など
在宅介護での「困り事」を解決したいというニーズが多かったです。
介護福祉士と連携して、生活全般に機能訓練(リハビリ)要素が加わるよう計画をしていきます。
老健から在宅復帰にむけた取り組みを紹介
在宅復帰になるため、生活をしながらリハビリをすることがメインになります。
多職種連携をして在宅生活に直結した訓練ができることが強みです。
私が携わった内容から大きく2つお伝えします。
支援事例①:入浴動作の獲得に向けた訓練
介護福祉士、リハビリ職員(私)の連携事例です。
受けた内容が以下になります。
こんな感じで、生活動作獲得に向けた訓練が進めていきました。
施設生活は介護福祉士の業務量がとても多いです。
様々な健康状態の利用者様の生活介護を行わなければならないですから、安全が余計に優先されていきます。
しかし、安全にし過ぎることで、自分で出来たことも行えなくなります。
必要な介助を的確に行っていき、かつ、効果的な訓練が合わされることで、生活動作が向上していきますので連携は欠かせません。
支援事例②:浮腫の軽減に向けた取り組み
医師、看護師、介護福祉士、リハ職員(私)による相互連携事例です。
浮腫(むくみ)をもった高齢者はとても多く、生活や健康状態などを総合的に観察し、介入しなければなりません。
ケース会議で受けた内容です。
こんな内容で進んでいきました。
浮腫は生活動作を改めても改善が見えない場合、状況に応じて「薬物療法」も必要です。
「リハビリ」だけ頑張ってもうまくいきません。
マッサージだけして改善していれば、世の中の高齢者はだれも浮腫になりません。
視点が沢山ありますので、多職種連携が活きてくるのです。
老健から在宅復帰後に居宅サービスを併用する
施設プランの目標が達成することで、老健から自宅へ退所となります。
しかし、そのままサービス終了ではありません。
冒頭でもお伝えしていますが、ケアプランには「施設プラン」と「居宅プラン」があります。
退所すると「居宅プラン」に切り替わります。
ですが、老健を退所した多くが、1週間後には「ショートステイ」で再入所するパターンが多いです。
理由は2つあります。
家族への安心、課題を再確認
老健への入所中、受け入れる家族は在宅介護から解放されます。
ですが、退所になるとこんな感じになります。
また、おばあちゃん(おじいちゃん)が帰ってくる。
家で介護できるのかしら。
こんな不安が湧き上がってきます。
久しぶりに在宅介護をはじめると、開始時は思った以上に介護負担を感じてしまいますので、ショートステイを挟みながら様子をみていきます。
「施設プラン」「在宅プラン」の間には「差異」があります。
この差をなくしていくことで家族の介護負担がさらに軽減していきますので、在宅復帰したあとの様子を細かく聴取して、課題をさらに焦点化する対策を講じていきます。
老健の質を向上させ、認識を変えるため
老健の施設経営の視点から深堀りします。
全国に沢山の老健(老人保健施設)があります。
冒頭でも記載したとおり「中間施設で、在宅復帰を目指す」という意味が法律で決まっています。
近年、在宅復帰ではなく「老人ホーム化」した老健施設も多くなっているのが現状です。
預けっぱなしで介護サービスだけを受けている状態のことを言います。
本来であれば、決まった期間だけ利用して退所するのがセオリーです。
意味がある施設経営にするため「在宅復帰ポイント」が厚生労働省によって定められました。
在宅復帰をさせることができない老健施設は、報酬単価が取れない仕組みです。
職員のお給料にも響いてくる内容となっています。
主観になりますが、入所希望をする家族に「ずっといることができない施設」という認識を促す意味合いも込められていると考えています。
老健が提供するサービスの質を向上させ、利用者様やその家族も、正しい使い方をしていくことが求められます。
ショートステイは在宅サービスに含まれますので「在宅復帰をしている」という位置づけに変わってきます。
本来の意味合いから離れていますが諸事情が絡んでいます。
【まとめ】老健から在宅復帰までの流れとは?
在宅復帰までの流れのポイントは3つです。
- ケアプランの立案と継続的な修正
- 多職種で、目標に向かう連携した支援
- 退所後に在宅介護サービスでフォローする
家族視点で考えると、在宅介護の課題を焦点化してもらえることが最大のメリットのように感じます。
居宅ケアマネも課題が焦点化できますので、「ケアプラン」がさらにブラッシュアップされます。
在宅介護が大変になった場合、すぐに施設入所を検討するのではなく、老健の利用も検討するのがおすすめです。
施設を調べていくことで、在宅介護の困り事が減っていくのではないでしょうか?
この記事を参考に行動していただければ幸いです。
施設検索はこちらの記事で解説していますので、いちどお読み頂くことをおすすめします。
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